ブラックダイヤモンド ファーストショットの難点

ブラックダイヤモンド ファーストショットの難点

アイスクライミングにおいて、知っておきたい技術の一つに『アバラコフ』又は『V字スレッド』があります。

氷に懸垂用の支点を設けるもので、アイススクリューを左右から斜めに打ち込んで、氷の内側で連結することでV型の空洞を作るものです。

その空洞に、ロープだったりスリングだったりを通して懸垂下降の支点として使います。

この『V字スレッド』を容易に設置できる道具こそが、ブラックダイヤモンドの『ファーストショット』です。

こういう外見です。二つ折りにされているこれを開くと、16、19、22の数字とともに穴が開いており、両端には内側に向けて傾斜のついた溝があります。

そうです!『ファーストショット』を『V字スレッド』を設置したい場所に押し当て、両端の溝に沿ってアイススクリューを打ち込むと、綺麗な『V字スレッド』を作ることができてしまうんです❗️

16、19、22の穴は、アイススクリューの長さによって、ファーストショットの長さも変えられるようになっており、それぞれのスクリューで最適な『V字スレッド』が設置できる優れものです。

また、本体にはカマキリの手みたいなギミックが隠れており、これを使って、『V字スレッド』にスリングを通したり、ロープやスリングを切断したりすることができます。

「なんで切っちゃうの?」という疑問もあると思います。アイスクライミングでは、しばしば支点などに使ったスリングが、氷りついてしまい、回収不能になることがあります。そのような時に活躍します。

そして、先日、この道具の難点が発覚しました。それは、「ブラックダイヤモンド以外のスクリューが入らない」という、重大な問題です。他メーカーのスクリューは、ブラックダイヤモンドのものよりもスクリューの径が若干大きいようで、ファーストショットの溝に入りませんでした。

無理に入れようとすると、歯が引っかかってしまい、うまく回せません。

歯が噛んだ跡がくっきりと、、、

なぜ今まで気づかなかったのか?

御察しの通り、「使っていなかったから」です。理由は以下のとおり、

①そもそも『V字スレッド』で懸垂下降することがほぼない

かなり強固な支点が設置できることは間違いありませんが、やはり氷です。絶対はありません。であれば、ハンガーや立木の方が支点としての信頼度が高いということになります。設置するのに時間もかかりますし。

②『V字スレッド』を作るのは難しくない

ファーストショットを使わずとも『V字スレッド』を設置することはできます。何回か練習すればできます。

③ファーストショットが使用できない場合が多い

最大の問題点です。ファーストショットは直線的です。ですが、ほとんどの氷面は曲線です。凹角の部分は、ファーストショットがうまく収まるのですが、穴を開けた部分の1番奥からの氷の厚さが薄くなってしまうので適しません。

そうすると自動的に平面か凸角になりますが、平面がなかなかありません。凸角は氷の出っ張りが干渉してファーストショットの両端が氷面から離れてしまいます。

これらの理由で、今まで使用していなかったため、他メーカーのスクリューとの相性が悪いことに気づいていませんでした。

なお、当然ブラックダイヤモンドのアイススクリューとは相性が良いことを付け加えさせていただきます。

購入を検討されている方がおりましたら、注意が必要です。すでに購入されてしまった方は、『ファーストショット』を諦めるか、スクリューをブラックダイヤモンドのものに買い換えるほかないでしょう。

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