山道具のあれこれ モンベル シームレスドライダウンハガー#3・#5

山道具のあれこれ モンベル シームレスドライダウンハガー#3・#5

モンベルの新型シュラフ、シームレスドライダウンハガー#3・#5の検証と感想を紹介します。

窮屈になりがちなマミー型寝袋の中で、そのストレッチ性能により圧倒的な快適さを誇るモンベルのシュラフ。これまでシリーズ最上位に位置付けられていたダウンハガー900シリーズが、リニューアルされ、『シームレスドライダウンハガー』に生まれ変わりました‼️

今回は、私個人が感じた、この新型シュラフの良い点、悪い点をご紹介します。

まずは、シリーズの概要から。

これまでのダウンハガー900は、名称の通り900フィルパワーの羽毛を使ったシュラフで、1オンス(30グラム弱)で、900立方インチのかさ高がある羽毛を使ったものでした。

ちなみに、フィルパワーの数値が高いほど良質の羽毛とされています。というのも、同じ重量で、より多くのかさ高を得られる=より暖かいからです。

で、このシリーズが廃盤となりまして、新たに『シームレスドライダウンハガー』となりました。新製品も900フィルパワーです。

変更点は、シュラフ外側が防水透湿素材であるゴアテックス・インフィニウムに変更となり、同時に防水ファスナーになりました。

早速、良い点のご紹介。

これまでは、テント泊をする場合には、シュラフとシュラフカバーの2点を同時に持っていかなくてはなりませんでした。しかし、シュラフ自体に防水シェルを備えたことで、シュラフカバーを別に持っていく必要がなくなりました。その結果、重量減に繋がりました。

シームレスドライダウンハガー#3はスタッフサック込みで567グラム

旧モデルは、スタッフサック込みで517グラム。これに、Gore-Texのシュラフカバー400グラム弱(別素材の簡易軽量なものでも150グラム以上)と考えると、格段に軽量だと言えます。

これが最大の利点です。これ以外にモンベルは、隔壁を無くしたことによる重量減なども謳っていますが、後から書く悪い点とのトレードオフですので、良い点とも言えないかなと私は思います。

シュラフが防水というのはかなり良いです。当然、就寝時の結露による水滴からダウンを守るというのが最大の目的かと思います。良い点ですが、雑誌でも取り上げられてますし、言わずもがななので、省略します。

私は、別の着眼点から防水性能をgood pointとして評価しました。私はまだ経験しておりませんが、ザックにパッキングしていていた飲み物が溢れるというアクシデントに見舞われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ペットボトルのキャップの締め忘れやボトルの破損、ザックに外付けしていたワカンの刃がザック内のビール缶を破って、ビールが噴き出したなんてことも見てきました。

又は、急に天候が悪くなり、土砂降りになってしまった際に、第1にレインウェアに着替えなきゃなんてワタワタしていて、ザックにレインカバーをかける時にはもうビショビショなんてよくあるシーンですよね。

ダウンは、軽くて暖かい反面、水に弱いという特性があります。ふわっふわっのプードルが、水に濡れると、ペッチャリしてめっちゃ細くなるのを思い浮かべてもらえれば分かりやすいかと思います。

山で泊まるのに、ダウンシュラフが濡れるということは、それだけでリスクです。寒くて眠れませんし、最悪死にます。

シュラフのシェルが防水というだけでこれらのリスクは大幅に軽減されます。シュラフ+シュラフカバーだとパッキング時は別々ですので、これらのアクシデントには無防備です。

個別にビニールなどに入れてパッキングしているから関係ないと思われる方もいらっしゃるでしょう。普段からパッキングの仕方を工夫されている熟練者の領域ですね。すごいです‼️

あまり良い例ではありませんが、トムラウシの遭難事故の際、雨の中一気に気温が下がった状況で、緊急避難的にシュラフに包まり急場をしのぎ、救出生還に至った方がいらっしゃいました。おそらくシュラフはベチャベチャで本来の性能は引き出せていなかったでしょう。そのような状況に絶対に陥らないとも言い切れません。こういった状況では、パッキングが防水処理されていたとしても雨の中に出すわけですから、意味はないでしょう。

これらの点から、登山という毎年遭難事故や死亡者が多く出るスポーツにおいて、リスクを軽減することができるナイスなアイテムだと評価することができます。

次に、悪い点👎

①外側の防水シェルが、少ししか伸びません‼️

つまり、シリーズの最大の売りであった、快適性が低下しています。あぐら、、、ギリかけません‼️それでも、他メーカーのシュラフよりはストレッチが効いていますが、これまで、ダウンハガーシリーズに寝たことのある方は、がっかりすると思います。

②隔壁がなくなったことにより、ダウンが寄ってしまう可能性がある。

モンベルは、新開発の『スパイダーヤーン』なる繊維をシュラフ内に配し、ダウンを絡みつけることによりダウンを保持するなどと宣伝しています。宣伝している以上、そういうことなのでしょう。

でも、私も買うにあたって、いろいろ見てきました。そうしたら、モンベル池袋店に吊るし展示されているシームレスドライダウンハガー#3のダウンがメチャメチャ偏ってました‼️頭側がぺっちゃんこで、脚側がモッコモコになっていました。一応、店員さんにお願いし、カウンターの上に平置きしてもらい、よく確認してみたら、やはりダウンが下に寄って(落ちて?)いるような状態で、全体が均一のかさ高ではありませんでした。(お店なので写真は撮れませんでした。)

そこで、このレビューを書くにあたり、2週間、家で同じように吊るし保管をし、さらにわざとダウンが偏る(下に落ちる)ように、毎日パンパンと叩いてみました。

結果、、、、、偏りは見られませんでした。他のモンベルの店舗数店も確認しましたが、偏りは特に確認できませんでした。ただし、実際に偏ったものを見たのも事実ですので、ダウンが偏る“可能性”があるとして、悪い評価をさせていただきました。

撮影の条件が異なるので、画像では比べられないですが、触感や透かしてみたときのダウンのかさ高に大きな変化は認められなかった
2週間後

③多分乾かすのが大変

縦走や定着などで連泊する場合、湿ったシュラフやシュラフカバーを干すことがあります。結露の露で濡れるのは外側なので、シュラフ+シュラフカバーであれば分解することにより、早く乾かすことができます。

また、帰宅後のメンテナンスでも同じことが言えるかと思います。

④ファスナーの耐久性

まだ、購入したばかりですので分かりませんが、多くの場合、防水ファスナーは普通のファスナーより耐久性の面で劣ります。

モンベルは修理などのアフターサービスが充実していますので、製品に問題があるわけではありませんが、修理中は泊まり登山ができなくなるという意味で、悪い側に入れさせていただきました。

以上、悪い点が多く出てしまいましたが、何を重視するかによって判断は分かれると思います。私は、リスクを最小化することを最も重視しておりますので、『良い点』が『悪い点』を上回っております。UL志向の方にもお勧めできると思います。皆様のシュラフ選びの参考になれば幸いです。

1 件のコメント

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